寄付は経費になる?個人事業主と法人でそれぞれ解説!

寄付は経費になる?個人事業主と法人でそれぞれ解説!

まとまった金額を寄付する際に、寄付金額分を経費にできたら嬉しいですよね。

実は特定の寄付先に寄付をすれば、個人事業主も法人も経費にできます

この記事では、経費にできる寄付先や経費にする方法を解説します。

寄付は経費にできる

寄付は法人・個人ともに、以下のような形で経費にできます。

  • 法人:損金算入で経費にする
  • 個人事業主:確定申告で寄附金控除をうける

上記をみていただくとわかるように、法人と個人で経費にする仕組みが異なります。それぞれ順に解説します。

法人は損金算入で経費にできる

法人は寄付をすると、損金算入できるため経費にできます。損金とは、法人税法で、法人の所有資産を減少させる経費や損失のことです。

つまり、費用を損金算入できれば、税務上の利益が減るため、法人税を節税できます

具体的に損金算入できる寄付先は以下の通りです。

(損金算入できる寄付先)

  • 認定NPO法人への寄付金
  • 国・地方公共団体への寄付金
  • 指定寄付金
  • 特定公益増進法人への寄付金
  • 一般の寄付金

参照:財務省

上記にあげた団体に寄付をすれば、損金算入によって経費計上ができます。

なお、法人が寄付することによる、節税メリットは以下の記事で詳しく説明しているのでぜひ参考にしてください。

個人事業主は確定申告で寄附金控除になる

個人事業主は確定申告をすることで、寄附金控除を適用でき、節税になります。寄付をすると、寄附金控除が受けられる団体は以下の通りです。

  • 認定NPO法人への寄付
  • 国や地方公共団体に対する寄付
  • 指定寄付金
  • 特定公益増進法人:独立行政法人、赤十字社など
  • 特定公益信託の信託財産にするための寄付金:信託銀行などに金銭を信託し、受託された銀行などが公益法人などに寄付をすること
  • 政治活動に関する寄付金
  • 特定新規中小子会社が発行した株式の取得に要したもの:新規事業を始める創業間もない会社のこと

参照:国税庁

実際にいくら控除されるかというと、計算式は以下の通りとなります。

次の(1)または(2)のいずれか低い金額-2,000円(1)その年に支出した特定寄付金の額の合計額(2)その年の総所得金額等の40パーセント相当額

引用:国税庁

例えば、30,000円の寄付をした場合、28,000円が控除額です。仮に所得税率が10%だとすると、2,800円の節税効果があります。

個人事業主でも、寄付をすると寄附金控除によって節税が可能です。

寄付金の基本の仕訳方法

寄付金は法人・個人事業主にかかわらず、基本的に「寄付金」の勘定科目で記載します。なお、基本的に相手に対して見返りを求めない場合に使用するものです。

例えば、認定NPO法人に現金50万円を寄付した場合、以下のように処理します。

借方貸方
寄付金500,000円現金500,000円

寄付を行ったら、適切に会計処理を行いましょう。

寄付金を損金算入するために必要なこと

法人が寄付金を損金算入するためには、法人税の確定申告までに、以下の2つが必要です。

  • 法人税申告別表14(2) 寄付金の損金算入に関する明細書の添付
  • 各区分における必要書類の保存

寄付金の損金算入に関する明細書では、寄付金の区分ごとに金額を記載していきます。

また、各区分ごとに寄付金受領証明書などの書類を用意し保存しておくことが必要です。

寄付先から送られてきたら、忘れずに保存しておきましょう。

経費にできる寄付金の種類

経費にできる寄付金の種類は、主に以下の5種類があります。

  • 国や地方公共団体に対する寄付金
  • 指定寄付金
  • 特定公益増進法人
  • 認定特定非営利活動法人
  • 一般の寄付金

ただし、上記4種類のうち、個人事業主・法人ともに経費にできるのは、一般の寄付金を除く3種類です。

国や地方公共団体に対する寄付金

国や各都道府県、市区町村が寄付先の寄付金です。例えば、以下のようなものがあります。

  • 災害時の義援金
  • 公立高校
  • 公立図書館

上記の寄付は個人事業主・法人ともに経費にでき、節税につながります。

指定寄付金

指定寄付金とは、公益を目的とする事業を行う法人への寄付金かつ、公益の増進につながって緊急性のあるものが該当します。

例えば、以下の通りです。

  • 国宝の修復
  • オリンピックの開催
  • 赤い羽根の募金
  • 私立学校の教育研究
  • 国立大学法人の教育研究 など

一時的なものが該当する場合が多いです。

特定公益増進法人

特定公益増進法人は、公共法人や公益法人などの中でも、主たる目的が教育や科学の振興に関連する法人です。

例えば、日本赤十字社や独立行政法人、学校法人や社会福祉法人などが該当します。

認定特定非営利活動法人

認定特定非営利活動法人は、認定NPO法人ともいわれ、自治体に認められた実績のあるNPO法人です。

一般のNPO法人へ寄付しても節税にはなりませんが、認定NPO法人への寄付は寄付金控除の対象となります。

認定NPO法人への寄付について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

一般の寄付金

ここまで紹介した以外の寄付金は、一般の寄付金となります。

例えば、以下が該当します。

  • 神社への祈祷料など
  • 政治団体への支出
  • 町内会への支出

ただし、上記への寄付は個人事業主は節税とならないので注意してください。

ふるさと納税は個人事業主も法人も経費にできる

ふるさと納税も経費にできます。個人事業主と法人では仕組みが異なり、それぞれ以下の通りです。

  • 個人事業主:ふるさとの納税をして確定申告をする
  • 法人:企業版ふるさと納税をして法人税を減らす

それぞれ詳しく説明します。

個人事業主はふるさと納税をして確定申告をする

個人事業主がふるさと納税を行うと、寄付金から2,000円を引いた金額を所得控除できます。結果、課税所得を基にして税額が計算される住民税も安くすることが可能です。

ふるさと納税で具体的にいくら控除されるかは、年収や家族構成などにより異なります。

ふるさと納税サイトで一度シミュレーションしてみるとよいでしょう。

なお、ふるさと納税をしただけでは、寄附金控除を受けることはできません。翌年の2月16日〜3月15日の間に確定申告をする必要があります。

法人は企業版ふるさと納税をして法人税を減らせる

法人も企業版ふるさと納税を利用でき、法人税を減らすことが可能です。

簡単に説明すると、各自治体が行う地方創生の取り組みに対して、法人が寄付をすると、法人税が節税できます。

寄付金に対して、最大90%も税制優遇されてお得です。例えば、1,000万円寄付をすると、最大900万円の法人関係税が軽減されます。

また、企業版ふるさと納税には、人材派遣型の寄付方法があり、お金以外でも自治体の支援が可能です。

企業版ふるさと納税について詳しくは、以下の記事でも解説しているのでぜひ参考にしてください。

寄付金を経費にするときの注意点

寄付金を経費にするうえで、以下の点には注意してください。

  • 寄付金と交際費の区別
  • 寄付金と広告宣伝費の区別
  • 未払金は損金算入できない

税務上の問題なく経費とするために、詳しく解説します。

寄付金と交際費の区別

寄付金と交際費の違いは、見返りのある・なしです。見返りの基準は、宣伝や広告効果があり、自社の利益につながるか否かです。

交際費の例は以下の3つです。

  • 接待:会食、接待ゴルフの費用
  • 供応:会食(特に食事、お酒の席)
  • 贈答:手土産のお菓子 など

上記は間接的に事業に関係がある出費として扱われます。利益の見返りのある・なしを基準に考えると、わかりやすいです。

寄付金と広告宣伝費の区別

寄付金と広告宣伝費の違いは、寄付により自社の宣伝になるか・ならないかです。

例えば、イベントの協賛金を出して、パンフレットの一部に自社の広告がのれば、広告宣伝費になります。

イベントスポンサーだとしても、自社名が広く参加者の目にふれれば、広告の要素があるので広告宣伝費です。

一方、企業名を出さない寄付の場合は、広告・宣伝効果がないと判断されるため、寄付金になります。

広告宣伝費にした方が、ゆくゆくは自社の利益につながる可能性があります。

未払いは損金算入できない点に注意

未払いの寄付金は、損金算入できません。実際に支払いが行われるまでの間、所得に一定額を加算して調整する必要があります。

第七十八条 法第三十七条第七項(寄附金の意義)に規定する寄附金の支出は、各事業年度の所得の金額の計算については、その支払がされるまでの間、なかつたものとする。

引用:法人税法施行令

本年度分の経費として計上したければ、確定申告の時期までに支払うようにしましょう。

受け取った寄付金の課税は法人・個人で異なる

寄付金を受け取った場合の税金については、個人事業主・法人で異なります。

  • 個人事業主:法人と個人のどちらから受け取るかで異なる
  • 法人:特別利益となる

個人事業主の場合は、寄付金の受け取り先が法人、個人でさらに異なります。

個人事業主は法人と個人のどちらから受け取るかで異なる

個人事業主は、法人・個人のどちらから受け取るかで税務上の扱いが異なります。

  • 個人から受け取る場合:年間110万円を超えると贈与税がかかる
  • 法人から受け取る場合:一時所得となる

上記のように税金の区分が異なるため、場合に分けてそれぞれ説明します。

個人から受け取ると贈与税

個人事業主が年間110万円を超えて個人から寄付を受け取ると、贈与税の申告が必要です。

ここでの寄付は、金銭だけでなく、物品のような資産も含みます。

なお、贈与として譲渡されたものは、所得税の計算対象からは除外されます。

法人から受け取ると一時所得

個人事業主が法人から寄付を受けると、一時所得になります。この場合、特別控除額の50万円を引いて残った金額が課税対象です。

50万円以下であれば、特別控除の範囲内なので課税されません。

法人は特別利益となる

法人が法人から寄付を受けると、特別利益になります。

例えば、使っていない不動産を無償でもらったり、金銭を受け取ったりした時です。

また、法人が個人から無償で不動産をもらった場合、税法上は一定の対価で譲渡されたものとみなされ、法人税の支払い対象となります。

この時の金額を、専門的な言葉では受増益(受け取ってプラスになった利益)といいます。現金を受け取った時は受取金額分を、土地や建物を受け取った場合は時価で計上するのが基本です。

注意点は無償や時価よりも低い金額で財産を受け取った場合でも、受増益を計上することです。

このように法人から法人へ寄付した場合は、特別利益として計上され課税対象となります。

経費にできる寄付先を調べて賢く寄付しよう

支払った寄付金は、個人事業主・法人ともに経費にできます。なお、経費にするためには、経費にできる寄付先に寄付する必要があります。

経費にできる寄付金は、以下の5つです。

  • 国や地方公共団体に対する寄付金
  • 指定寄付金
  • 特定公益増進法人
  • 認定特定非営利活動法人
  • 一般の寄付金(法人のみ)

寄付金を経費にしたければ、上記のいずれかへ寄付をしましょう。


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