NPO法人も就職先の1つとして検討しているけれど、給料が安いイメージがあるかもしれません。
実際、一般企業に比べると、NPO法人の平均給与は低い水準です。
しかし、NPO法人の種類は広く、分野によっては人件費を多額に出している団体はあります。
本記事では、NPO法人の給料について、平均額や給料の決定方法などについて解説します。
さらに、給料が高いと考えられるNPO法人の分野やNPO法人の収入原資について、統計データをもとに説明しましたので、ぜひ参考にしてください。
NPO法人の平均給料は低い
民間企業と比べると、NPO法人の給料は平均的に低い水準です。
内閣府の「令和2年度特定非営利活動法人に関する実態調査」を見ると、NPO法人の平均給料は認証法人で249万円、認定・特例認定法人で327万円と分かります。
一方、国税庁の「令和2年分民間給与実態統計調査」によると、民間企業の給料は平均369万円・平均賞与65万円なので、合計433万円です。
民間企業の平均給料と比べると、NPO法人の平均給料は106万円低いことが分かります。
・認証法人 →NPO法人として認められた一般のNPO法人 ・認定・特例認定法人 →自治体から認定されたNPO法人で、寄付をすると税制優遇が受けられる |
NPO法人と認定NPO法人の違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
NPO法人は利益をあげる目的で運営されていないため、おのずと高い給料にはならないといえます。
NPO法人ごとに給料水準は異なる
NPO法人の平均給料は民間企業に比べて低いものの、活動分野によって人件費は大きく異なります。
そのため、人件費を多く出しているNPO法人に入れば、他のNPO法人より高い給料がもらえると考えられます。
給料が比較的高いと考えられるNPO法人の活動分野
給料が比較的高いと考えられるNPO法人の活動分野は、保健・医療・福祉です。
この3つの活動分野は、他の分野に比べて突出して高い人件費を出しているからです。
実際に正規職員には、年間で約2,864億円の人件費を出しています。
次いで高額な人件費を出している活動分野は、子どもの健全育成です。
とはいえ、正規職員への人件費は年間約386億円と、先ほどの分野の約7分の1となっています。
個人に対する給料データがないものの、人件費の総額が高いことから、個人の給料も高額になると推測できます。
NPO法人の役員報酬
内閣府による「令和2年度特定非営利活動法人に関する実態調査」によると、NPO法人の役員報酬の平均は年間106万円です。
一般の企業のように役員になれば給料が大幅に上がるのではなく、むしろ社会貢献のために働くという印象が強くあります。
NPO法人の給料の決定方法
NPO法人の給料は、団体ごとに異なる給与テーブルに基づいて決定されます。
今回は正規職員(一般スタッフ)の給料がどのように決まるのか、統計データを基に解説します。
労働政策研究・研修機構によると、給料の決定で一番多く採用されている方法は、「職務や職種を重視した制度」によるもので、全体の26.7%でした。
次いで、「年齢や勤続年数を重視した制度」が14.5%、「時給など一律に決定」が14.2%となっています。
NPO法人では、年功序列ではなく、どの職務や職種になるのかが重視されているのです。
働きぶりによっては、早いうちから昇給する可能性があります。
NPO法人の給料の原資
そもそもNPO法人は営利目的の運営を禁止されているのに、どこから給料の原資を作っているのでしょうか。
結論からいうと、会員からの会費収入と個人や民間からの寄付金がメインの原資となっています。
NPO法人の収入源について詳しく知りたい方は、以下の記事で解説しているのでぜひ参考にしてください。
とはいえ、認証法人か認定・特例認定法人かによって、収入源の割合が多少異なるので解説します。
NPO法人の主な収入源と割合
NPO法人の収入源と割合は、以下の通りです。
認証法人と認定・特例認定法人ごとに表しています。
収入源 | 認証法人 | 認定・特例認定法人 |
---|---|---|
会員からの会費収入 | 26.7% | 19.5% |
個人や民間(企業)からの寄附金 | 6.9% | 27.0% |
個人や民間(企業)からの助成金・補助金 | 3.4% | 4.6% |
行政からの助成金・補助金 | 16.8% | 13.2% |
利用者からの料金収入(物販等を含む) | 17.2% | 11.5% |
行政からの委託、または指定管理者としての業務 | 16.6% | 15.9% |
企業からの委託 | 2.3% | 1.9% |
その他 | 10.1% | 6.4% |
NPO法人の収入全体に占める収入源ごとの割合は、認証法人では会費収入が最も多く、全体の26.7%です。
次いで、利用者からの料金収入17.2%、行政からの助成金・補助金16.8%と続きます。
認定・特例認定法人では、個人や民間からの寄付金が最も多く27.0%です。
次いで、会員からの会費収入19.5%、行政からの委託業務等15.9%と続きます。
認定・特例認定法人(認定NPO法人)に寄付すると、税制優遇が受けられるため、寄付金による収入が多くなっています。
認定NPO法人に寄付することによる税制優遇については、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。
NPO法人にも事業収益がある
割合こそ多くないものの、NPO法人にも事業収益があります。
経常収益が1,000万円を超える法人は、認証法人では36.4%、認定・特例認定法人では68.0%と半数以上を占めています。
NPO法人は、すべてボランティアで運営されている印象を持たれているかもしれません。
しかし、株主に配当金を支払うような「利益の分配」ができないだけで、事業をして収入を得ること自体は禁止されていないのです。
実際に物品の販売や労力の提供などによる事業収入を得ているNPO法人は、数多くあります。
NPO法人なら民間企業や行政では対応できない社会課題の解決に貢献できる
NPO法人なら、一般企業や行政の手が届かない社会的課題の解決に貢献できます。
他にも、NPO法人で働く独自の魅力は、以下の5つです。
- 特定の問題や集団に焦点を当て、細やかなサービスが提供できる
- 地域コミュニティとの密接な関係構築ができる
- 利益追求に縛られず、特定の社会的使命や目的に基づいて活動できる
- 寄付や助成金、ボランティアなど多様な資金源とリソースを活用できる
営利目的でないからこそ、社会貢献性を強くもって働くことができます。
また、活動分野も非常にさまざまあるので、気になる方は一部の認定NPO法人を紹介しているページがあるのでぜひご覧ください。
NPO法人へ就職する方法
NPO法人への就職は、新聞広告やハローワークなどの公募から応募可能です。
また、紹介による就職も多く、ボランティア活動を通じて関わりを持ち、そこから正規職員になる人が多くいます。
さらに、副業でNPO法人と関わるという選択肢もあります。
ただし、その際にはいくつか注意点やメリット、デメリットがあるので、NPO法人で副業したい方は、以下の記事を参考にしてください。
なお、NPO法人へ就職する方法についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
NPO法人では人材確保が急務
NPO法人が抱える最大の課題は、人材の確保・教育です。
「令和2年度特定非営利活動法人に関する実態調査」によると、認証法人の62.0%、認定・特例認定法人の66.7%が人材の確保・教育を課題として挙げました。
そのため、求職者にとっては比較的就職しやすいと考えられます。
求職活動の経路は紹介と公募
NPO法人への就職経路は、紹介か新聞広告やハローワークなどの公募がメインです。
どちらかというと紹介の方が多く、「NPOの有給職員とボランティア」の統計では、NPO法人での活動のきっかけは、公募が15.6%に対して、紹介は62.2%となっています。
紹介が多い理由は、最初はボランティアで参加し、その後に紹介で正規職員に登用されるケースが多いためです。
NPO法人でこれから求められるスキル
NPO法人で今後求められるスキルは、主に以下の3つです。
- 宣伝・広報
- IT
- マーケティング
なぜならNPO法人が今後企業との提携を図るうえで、上記の分野を強化したいと考えているからです。
NPO法人の活動を知ってもらうことは、寄付金の増加だけでなく、協力してくれる方が増える可能性もあるので、特に宣伝・広報のスキルが求められているのでしょう。
その他、インターネット上でより良く活動を周知するために、ITやマーケティングのスキルに需要があるのだと考えられます。
求められているスキルの知識を吸収しておくと、NPO法人への就職は有利に進むでしょう。
NPOでのキャリアは社会問題解決への貢献
NPO法人で働くと、平均給料は一般の会社より少し低いです。
これはNPO法人の主な収入源が、会員の会費や寄付などの支援に依存しているからです。
しかし、NPO法人での仕事には、お金だけではない価値があります。
教育支援や環境保護、地域開発や文化促進など、さまざまな分野で社会貢献でき、達成感や充実感を得られるのです。
現在、NPOでは人材が不足しているため、働けるチャンスは大いにあります。
社会のために役立ちたいという意志が強い人にとって、NPOはよい就職先の1つです。