昨今、社会貢献という言葉をよく耳にするものの、個人や企業はどのようなことをすればいいか疑問に思っていないでしょうか。
結論、社会貢献とは、個人や企業が社会をよりよくする活動全般を指します。
とはいえ、具体的な活動内容までイメージできないという方もいるでしょう。
本記事では、そもそも社会貢献とはなにか解説しつつ、個人・企業でできる取り組みなどを紹介します。
社会貢献とは
社会貢献とは、個人や企業が社会をより良くする活動のことです。
例えば、環境保全やお年寄りの支援、自然災害の被災地支援などです。
企業や団体などの場合は、CSR(Corporate Social Responsibility:社会的責任)を通して、利害関係のある従業員や顧客、地域社会などに責任ある行動をとって社会貢献しています。
また、法務省では、保護観察中の人たちの犯罪や非行からの立ち直りの1つの方法として、社会貢献活動を行っています。
どの活動が社会貢献か否かの明確な定義は決まっておらず、活動そのものが社会の役に立つ前提で、個人や企業の利益を追求しない活動が社会貢献です。
社会貢献の歴史
日本での「社会貢献」という言葉の歴史は浅く、2003年頃からといわれています。
この時期に企業にCSR室などが設置され、社会貢献が意識され始めました。
よって、2003年は「社会的責任の元年」とも呼ばれています。
また、募金活動は戦後の1947年に「国民たすけあい運動」として始まったのがきっかけです。
当時、1回目で約6億円(現在にして約1200億円)もの寄付金が集まりました。
そして、ボランティア活動が活発になったのは1995年の阪神・淡路大震災がきっかけです。
当時は100万人以上の市民が災害支援のボランティアに参加し、復旧・復興に努めました。
そのため1995年は「ボランティア元年」とも呼ばれています。
「社会貢献」という言葉自体は最近できたものの、募金やボランティアなどの社会貢献に該当する活動は以前から行われてきたのです。
海外に目を向けてみると、アメリカでは1600年頃から有志による消防団が活動していた記録があります。
これも社会貢献活動の1つといえるでしょう。
また、ヨーロッパでは宗教的背景もあり、1800年頃から社会貢献の考えが根付いています。
特にヨーロッパの場合、「自社の利益追求だけではなく、社会全体に適切に貢献しなければならない」とされており、現在のCSR活動の基礎となっているともいえます。
社会貢献の重要性
社会貢献は、深刻な社会問題を少しでも解決するために非常に重要です。
実際に今でも以下のような社会問題が起こっています。
- 食品ロスを含む食糧問題
- 差別問題
- 気候変動
- 少子高齢化
- エネルギー問題
- 文化継承・保護
- 多様性の問題
- ジェンダー
- 難民
- 格差問題(医療・教育・貧困)
- 感染症
食品ロスを含む食糧問題を例にあげると、消費者庁のデータでは2022年度の食品ロスの推計値は472 万トンとされています。
内訳は、食品事業者から発生したものが236万トン、一般家庭から発生したものが236 万トンとほぼ同じでした。
また、農林水産省の「食料需給表(令和3年度)」によると、日本の食料自給率は38%(カロリーベース)で、食料の多くを海外からの輸入に頼っているのが現状です。
つまり、わざわざ海外から輸入しているにもかかわらず、多くの食料を捨ててしまっているのです。
その結果、食料の輸送コストや処分コストが無駄になるだけでなく、環境への負担にもなっています。
このような社会問題はまだまだ多くあるため、個人・企業それぞれが少しでも社会貢献活動を行うことが大切なのです。
人が社会貢献をする理由
そもそもなぜ人は社会貢献をしようと考えるのでしょうか。
金銭や待遇など明確なメリットがなくても、社会貢献活動を喜んでやっている人は多くいます。
その理由は、人は誰かの役に立ちたいという欲求があるからです。
米国の心理学者A・マズローによると、以下の図のように生理的欲求、安全欲求が満たされると人間は他者との関わりを求め始め、最終的には自分の能力を発揮して創造したいと考えるようになるとされています。
そして、この5つを段階的に満たした先に自己超越の欲求があり、自分ではない誰かや社会に貢献したいと考えるのです。
その中に、寄付やボランティアなどの社会貢献活動が含まれます。
さらに、内閣府が行った調査では、社会貢献活動の1つであるボランティアに参加した方の参加理由では、「社会の役に立ちたいと思ったから」が1位でした。
このように、自分自身の欲求が満たされ、社会に目を向けるようになると「社会の役に立ちたい」と思い、社会貢献活動につながると考えられます。
個人でも簡単にできる社会貢献活動10種類
個人でも簡単にできる社会貢献活動は、主に以下のようなものがあります。
- 寄付
- 募金や特定のものを集める
- 環境保全
- 地域貢献
- 子ども支援
- フェアトレード
- エシカル消費
- 災害支援
- 国際交流・国際協力
- ヘアドネーション
自分の住む地域で完結するものや身近にできるものばかりですので、順に解説します。
寄付
寄付は個人が手軽に社会貢献する方法の1つです。
NPOやNGO団体などが常に募集しているものや、災害時に一時的に募集されているものがあります。
また、認定NPO法人や国などの対象団体に寄付すると、寄附金控除が受けられるため、税金を抑えることも可能です。
金銭だけではなく、おもちゃや服など物品を寄付することも可能です。
不要になった物品を断捨離する際に、捨てずに寄付を選択してみるのもよいでしょう。
現在なら、インターネットを通じて自宅にいながら寄付できるので、非常に手軽な社会貢献といえます。
募金や特定のものを集める
募金や特定のものを集めることも、簡単にできる社会貢献です。
例えば、街頭や駅前での募金活動に協力したり、コンビニなどにある募金箱にお釣りを入れたりなどができます。
また、現在はインターネットでも募金することができるので非常に手軽です。
その他にも、公式サイトのページやボタンをクリックするだけで募金できる「クリック募金」という仕組みもあります。
クリック募金なら、お金を一切かけずに募金できます。
集められたお金は、被災地支援や途上国の援助などさまざまな社会貢献活動の支援に充てられます。
また、ベルマークや使用済み切手など特定のものを集めるのも社会貢献につながるのです。
個人で集めて回収場所に持っていく必要はあるものの、金銭的な負担が少ないため身近な社会貢献の1つといえます。
環境保全
身近な環境を保全する活動も個人でも簡単にできます。
例えば、以下のような活動が該当します。
- ゴミを分別して捨てる
- マイボトルを持参してペットボトルを使わない
- 食品を廃棄しない
- 照明をLEDに替える
日々の暮らしから少しずつ環境へ配慮するようにしてみましょう。
地域貢献
地域貢献は、地域の行事参加やイベントスタッフ、伝統文化継承など自分が住む地域で完結する社会貢献です。
具体的には、地域イベントスタッフとして主催者に協力する、イベントに参加者として参加するなどが挙げられます。
自分ができそうな範囲で、地域貢献をしてみてはいかがでしょうか。
子ども支援
子どもの支援は、学習・スポーツ支援や子ども食堂など子どもたちの貧困や孤独に対する支援が一般的です。
自分の住んでいる地域でも活動している団体があれば、手軽に参加できます。
また、子どもたちの成長や活気を感じられるため、子どもが好きな方にぴったりでしょう。
フェアトレード
フェアトレードは直訳すると公正な取引という意味で、発展途上国の製品を適正価格で買う活動を指します。
これにより、発展途上国の生産者の利益が守られ、生活支援につながります。
どの商品がフェアトレードに当たるかは、以下のような認証ラベルで簡単に見分けることが可能です。
コンビニやスーパーでもフェアトレード商品はあるので、日々の買い物でできるだけフェアトレード商品を買うようにしてみてはいかがでしょうか。
エシカル消費
エシカル消費とは、人や社会・環境に配慮した製品やサービスを選択し消費することです。
例えば、フェアトレード商品や就労支援品の購入、フードロス削減活動などが挙げられます。
フェアトレード商品は認証ラベルのついた商品、就労支援品は福祉施設などで作った商品などを指します。
フェアトレード商品はスーパーやコンビニなど、就労支援品はオンラインショップなどでの販売例があり、思った以上に簡単に手にすることが可能です。
また、フードロス削減の活動の身近な例を挙げると、以下のようなものがあります。
- 買い物するときは棚の手前からとる
- 食べきれる分だけ購入する
誰でもできる心がけで、社会貢献につながります。
災害支援
災害支援は、被災地でのボランティア活動や寄付が該当します。
現地で行う活動は、炊き出しや清掃などです。
被災地から距離が遠い場合、お金や物資を送って被災地を支援することもできます。
日本は地震や台風などの自然災害が多い国なので、需要の大きい社会貢献活動です。
国際交流・国際協力
国際交流や国際協力も立派な社会貢献活動の1つです。
通常、海外に直接行って現地の方々を援助することを思い浮かべますが、国内に住む外国人との国際交流や通訳ボランティアといった活動もあります。
海外に行くのが難しいけれども、国際交流や国際協力をしたい方は自分の住む地域で募集がされていないか確認してみるとよいでしょう。
ヘアドネーション
ヘアドネーションは、サロンや団体に髪の毛を寄付して、医療用ウィッグを作る取り組みです。
作った医療用ウィッグは、病気や外傷、小児がんなどで頭髪に悩みのある子どもたちに届けられます。
これによって、子どもたちは見た目を気にせずのびのびと生活を送れるようになるのです。
ただし、寄付できる髪の長さや状態などに指定があるため、寄付前に確認しておきましょう。
普段はカットされて捨てられてしまう髪の毛を有効活用できるので、誰でもできる社会貢献活動といえます。
社会貢献活動につながる仕事
仕事の中には、社会貢献性が高いものがあります。
普段の仕事から社会貢献をしていきたい方は、以下のような職に就くのもよいでしょう。
- 医師や看護師などの医療関係の仕事
- 警察官や弁護士など安全や人権を守る仕事
- 介護士や教師など社会の権利を守る仕事
- 地方公務員やNPO・NGOスタッフなど海外や地域貢献の仕事
上記以外に関わる企業や職に就いたとしても、CSR活動に関わるようにすれば、どの職でも社会貢献活動に近い位置で仕事ができます。
なお、社会貢献性の高い仕事については、以下の記事で詳しく解説しています。
企業ができる社会貢献活動
企業ができる社会貢献活動は、以下のようなものがあります。
- 従業員のボランティア参加
- 自社の物資・サービス・人材などの無償提供
- 障がい者雇用
- メセナ(芸術文化支援)活動
どれも個人にはできない企業だからこそできる活動です。
企業で取り組めないかぜひ検討してみてください。
特に企業の社会的責任をCSRといい、詳しくは以下の記事で解説しています。
参考にしてください。
従業員のボランティア参加
企業に勤める従業員にボランティア活動へ参加してもらうという方法があります。
例えば、一次的に被災地支援や取引先の関連団体の活動に参加するなどが挙げられます。
また、専門知識・ノウハウを活用して行うプロボノ活動もあり、企業だからこそ提供できるものがあるのです。
プロボノ活動については、以下の記事で詳しく説明しているのでぜひ参考にしてください。
自社の物資・サービス・人材などの無償提供
企業と団体がパートナーシップを築き、災害時に自社の物資・サービス・人材などを無償提供する活動ができます。
例えば、食品メーカーであれば、災害現場や発展途上国に自社の食品を提供するなどです。
他にも、企業が保有しているイベント会場やホール、グラウンドなどを開放して、文化やスポーツの振興を支援することもできます。
個人では難しい規模・種類の支援が、企業なら可能です。
障がい者雇用
企業が積極的に障がい者雇用を行うと、新たな雇用が生まれて障がい者の方々を助けることになるため、社会貢献につながります。
また、障がい者雇用を推し進めると、以下のようなメリットもあります。
- 地域産業の活性化
- バリアフリーなど職場環境の改善
- 企業イメージの向上
- 新たな助成金の受給
そもそも厚生労働省の障がい者雇用のルールによると、「従業員40人以上雇用している事業主は、障がい者を1人以上雇用しなければならない」としています。
障がい者を社内にいれることで、業務の効率化や意識改革にもつながるでしょう。
メセナ(芸術文化支援)活動
メセナとは芸術文化支援活動のことで、企業が資金提供によって文化活動や芸術活動を支援することを指します。
例えば、美術展の主催や文化施設の経営、スポーツ大会の開催などです。
企業がメセナ活動をすると、芸術・文化を保全することにつながるため、現在ではCSR活動の一環として行われるようになっています。
企業が社会貢献するメリット
企業が社会貢献するメリットは、主に以下のとおりです。
- 企業イメージの向上
- 人材獲得や社員のモチベーション向上につながる
- 企業価値の向上
- 投資家に投資してもらいやすくなる
社会貢献活動は、企業側にとっても多くのメリットがあるため、それぞれ解説します。
企業イメージの向上
社会貢献をする企業は、企業イメージが向上する傾向にあります。
営利目的の活動だけする企業よりも、消費者から「社会のために活動している」という良いイメージを抱かれやすくなり、消費者から信頼が得られるのです。
その結果、既存の消費者からの評価が高まるだけでなく、新規の消費者へのアピールにもつながって、売上向上につながる可能性もあります。
人材獲得や社員のモチベーション向上につながる
企業が社会貢献活動をしていると、人材獲得や社員のモチベーション向上につながります。
ただ利益をあげることだけに執着している企業より、良いイメージを持たれて働いてみたいと思われる可能性が高まります。
また、社会貢献をしている企業で働く従業員は、自社での仕事に対して誇りを持つようになるでしょう。
その結果、自分の業務に対するモチベーションが向上し、生産性が上がると考えられます。
投資家に投資してもらいやすくなる
社会貢献をしている企業は、企業価値が高いと判断されて投資家に投資してもらいやすくなる傾向にあります。
近年は、環境や社会・ガバナンスに配慮した企業に積極的に投資するESG投資の重要性が増しているからです。
そのため投資家にとっても、社会貢献活動を行っているか否かは投資判断の材料になっています。
社会貢献活動を行ってアピールすることで、企業価値を上げて出資をいつでも受けやすくすることが可能です。
個人でも企業でも社会貢献活動は誰でもできる
社会貢献活動は、個人や企業にかかわらず誰でもできる社会をよりよくする活動を指します。
現在でも、多くの社会問題は残っているため、日常生活の少しの工夫で社会貢献していくことが大切です。
また、企業単位で協力して社会貢献をすれば、個人では難しい規模の社会問題の解決に寄与できるでしょう。
ぜひ本記事でご紹介した社会貢献活動を1つでも行ってみてはいかがでしょうか。