SDGsとは具体的にどのようなものかご存知でしょうか。
名前だけ聞いたことがあっても、詳細に答えられる人は少ないでしょう。
SDGsとは、持続可能な開発目標のことを指し、世界中で達成に向けて動いています。
この記事では、SDGsの概要や歴史的背景、17の目標などをわかりやすく説明します。
さらに、個人や企業でできる取り組みも解説しているのでぜひ参考にしてください。
SDGs(Sustainable Development Goals)とは
SDGs(Sustainable Development Goals)とは、日本語で持続可能な開発目標といいます。
具体的には、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
その内容は、大きく17の目標があり、その下に169のターゲットと231の指標があります。
それらの内容を定めるうえで、重要視されている要素は以下の5つです。
- 普遍性:全世界が行動するできる
- 包摂性:「誰一人取り残さない」人間の安全保障理念を反映
- 参画型:全てのステークホルダーが役割を担う
- 統合性:社会・経済・環境に統合性を持って取り組む
- 透明性:定期的なフォローアップ
SDGsは2015年9月の国連サミットで採択され、「誰一人取り残されない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現が全体のテーマとなっています。
日本国内では、2016年5月からSDGs推進本部が設置され、実施指針を決定して行政や民間企業などが一体になってSDGsを推し進めています。
SDGsができた背景
SDGsができた背景には、SDGsの前進の目標である「MDGs(Millennium Development Goals)」の存在があります。
MDGsとは、2000年から2015年までに達成すべき目標として下記の8つの目標と、21のターゲット項目が定められたものです。
1.極度の貧困と飢餓の撲滅 2.初等教育の完全普及の達成 3.ジェンダー平等推進と女性の地位向上 4.乳幼児死亡率の削減 5.妊産婦の健康の改善 6.HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止 7.環境の持続可能性確保 8.開発のためのグローバルなパートナーシップの推進 |
MDGsの推進によって、貧困や教育格差などで一定の成果をあげていました。
しかし、発展途上国中心の目標だったため、一部の国から反発を受けた歴史があります。
そのため、MDGsをベースに、先進国も含めてあらゆる社会問題に対応できるよう作られたのがSDGsです。
SDGsの17の目標
SDGsで定められている17の目標は以下のとおりです。
1.貧困をなくそう 2.飢餓をゼロに 3.すべての人に健康と福祉を 4.質の高い教育をみんなに 5.ジェンダー平等を実現しよう 6.安全な水とトイレを世界中に 7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに 8.働きがいも経済成長も 9.産業と技術革新の基盤をつくろう 10.人や国の不平等をなくそう 11.住み続けられるまちづくりを 12.つくる責任つかう責任 13.気候変動に具体的な対策を 14.海の豊かさを守ろう 15.陸の豊かさも守ろう 16.平和と公正をすべての人に 17.パートナーシップで目標を達成しよう |
上記を知ればSDGsがなにを目指しているのか把握できるので、それぞれ解説します。
目標1:貧困をなくそう
「貧困をなくそう」とは、世界中で課題になっている貧困をなくすことがテーマの目標です。
2020年時点で世界人口は77億9,480万人であり、コロナの影響もありこのうち7億人が貧困状態にあるといわれています。
世界中で約11人に1人が貧困状態にあるのです。
なお、貧困には絶対的貧困と相対的貧困の2つがあり、それぞれに課題があります。
絶対的貧困
絶対的貧困とは、国や地域に関係なく、生きる上で必要最低限の生活水準が満たされていない状態です。
一般的にイメージする貧困状態に近いのではないでしょうか。
絶対的貧困の目安は、世界銀行が2015年10月に国際貧困ラインを1日1.90ドル(1ドル140円と仮定すると日本円で約266円)と設定しています。
この1日1.90ドル未満で生活する人は絶対的貧困状態にあります。
実際に2017年時点では、絶対的貧困に陥っている人数は世界で6億8900万人と、世界人口の9.2%を占めていました。
相対的貧困
相対的貧困とは、国や地域の水準の中で比較し、大多数よりも貧しい状態のことです。
日本では絶対的貧困よりも相対的貧困がしばしば問題になっています。
厚生労働省の資料によると、2021年の貧困線(等価可処分所得の中央値の半分)は 127 万円です。
この貧困線に満たない世帯を相対的貧困といい、15.4%も存在します。
また、2018年時点では、日本の相対的貧困率は下記グラフの赤線で、OECD加盟国35カ国中でワースト6位という結果です。
世界人口における絶対的貧困にある方の割合や、相対的貧困の現状をふまえて、貧困は世界中で社会問題になっているといえます。
目標2:飢餓をゼロに
「飢餓をゼロに」とは、食べ物を十分に摂取できず、栄養不足状態にあることをゼロにするのがテーマの目標です。
SDGsでは、2030年までに飢餓を世界中から撲滅するように宣言しています。
例えば、新たな農業システムの開発やフードロスの削減、フードバンクの活動などです。
特に子どもや若年女性の栄養不良の解消をしつつ、全世界のすべての人が安全で栄養のある食料を得られる未来を目指しています。
目標3:すべての人に健康と福祉を
「すべての人に健康と福祉を」とは、あらゆる年齢の方々の健康的な生活の確保や福祉の促進をすることがテーマの目標です。
具体例を示すと、以下のとおりです。
- 乳幼児の死亡率低下
- 感染症予防・治療の強化
- 福祉サービスへのアクセス改善 など
上記のように、あらゆる健康や福祉の問題解決がテーマになっています。
また、新生児〜成人まで、支払い可能な金額で医療が提供されるよう配慮するのも特徴の1つです。
目標4:質の高い教育をみんなに
「質の高い教育をみんなに」とは、すべての子どもに初等・中等教育を無償提供したり、教育施設を提供したりするのがテーマの目標です。
さらに、誰もが公平に教育を受けられるようにすることもテーマの1つです。
なお、子どもに限らず、大人や障がい者や先住民なども職業訓練なども対象に入っています。
技術的や職業的なスキルを身につけてもらって、経済的な自立を促進する狙いがあります。
目標5:ジェンダー平等を実現しよう
「ジェンダー平等を実現しよう」は、性別にかかわらずすべての人が平等に生きられる社会を目指すのがテーマの目標です。
世界には、以下のような女性の不平等に関するさまざまな課題があります。
- 女性というだけで差別や被害を受けてしまう
- 社会構造により女性が不平等な扱いを受ける など
もちろん女性だけではなく、ジェンダー全体で関わる問題に対しても対応するように定められています。
目標6:安全な水とトイレを世界中に
「安全な水とトイレを世界中に」とは、水や衛生管理をテーマとする目標で、以下のような課題があります。
- 安全な飲み水の供給
- 感染症のリスクを低くするためのトイレの整備
- 水や生態系の保護 など
日本で生活しているとあまりイメージできないかもしれませんが、ユニセフによると、2022年時点で世界では約35億人が安全なトイレを利用できていないのです。
また、水不足の地域では、水をめぐる紛争の勃発が問題視されています。
6番目の目標は、人が生きるのに欠かせない水について考えて課題を解決するのを目的としています。
目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」とは、再生可能エネルギーがテーマの目標です。
実際に二酸化炭素などの温室効果ガスが増えた結果、2000年以降、年間平均気温が1度以上上昇したデータがでています。
地球温暖化が進むと、気候変動による食糧不足や水不足などから、飢餓といった別の課題につながりやすくなります。
このため、温室効果ガスの排出を抑えた太陽光発電や風力発電など、環境負荷の少ない再生可能エネルギーに注目が集まっているのです。
目標8:働きがいも経済成長も
「働きがいも経済成長も」とは、経済がテーマの目標で、主な内容は以下のとおりです。
- 経済成長
- 働きがい・経済生産性の向上
- 雇用創出 など
また、経済成長だけでなく、人身売買の防止などもこの目標に含まれます。
経済に関わる目標を網羅する内容となっており、若者や障がい者の雇用(教育や職業訓練)も含まれています。
目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、インフラ整備や技術開発がテーマの目標です。
具体例は以下のとおりです。
- 道路や鉄道の整備
- 上下水道・発電所の整備
- インターネットの普及 など
インフラは私たちの生活になくてはならないもので、災害時には速やかに復旧できるような仕組みを考えなくてはなりません。
また、近年の情報化社会において、インターネットの普及も課題の1つです。
国際電気通信連合(ITU)によると、インターネット普及は国の開発レベルに関係していると発表しています。
このように、近現代において、産業と技術革新の基盤作りは大切な目標の1つといえます。
目標10:人や国の不平等をなくそう
「人や国の不平等をなくそう」は、国内や各国の間に存在する不平等についての内容がテーマの目標です。
ターゲットには世界の金融市場や金融機関のモニタリングが含まれており、国際的に平等を目指す活動も含まれています。
さらに、移民政策や移住労働者の送金コストの引き下げなど移民に対するターゲットが定められていて、金銭面からも人や国間での不平等をなくす活動が盛り込まれています。
目標11:住み続けられるまちづくりを
「住み続けられるまちづくりを」は、すべての人が安心して住み続けられる持続可能なまち作りがテーマの目標です。
具体例を挙げると、以下のような内容です。
- 安全な住宅サービスの確保
- スラムの改善
- 公共交通機関の拡大 など
また、住宅に限らず、文化遺産や自然遺産の保護・保全なども対象です。
社会的に脆弱な立場にある人も含め、すべての人が安心して住み続けられるまちづくりを目指しています。
目標12:つくる責任つかう責任
「つくる責任つかう責任」とは、持続可能な生産消費形態の確保がテーマの目標です。
私たちの生活に必要な電気や水、食糧などの資源は地球環境から手に入れているものです。
環境省の資料によると、今の生活を世界中で続けると、必要な地球の数は1.7個になります。
つまり、今の状況は、地球の資源を「前借り」して生活しているとも捉えられます。
このため、生産者と消費者、企業と個人などそれぞれの行動が循環し、持続可能な生産消費形態にする社会を目指すべきだとされているのです。
目標13:気候変動に具体的な対策を
「気候変動に具体的な対策を」は、気候変動や自然災害への対応・対策にすべての国々が一丸となって取り組むことがテーマの目標です。
気候変動による干ばつや大型台風、集中豪雨などにより、農業がしにくい土地になったり、住む場所がなくなったりと世界中の人たちの生活に影響がでています。
その被害を1国だけでなく、世界全体で支え合おうという内容の目標です。
また、発展途上国のニーズに対応するための支援や女性・青年・地方コミュニティへの支援なども含まれています。
目標14:海の豊かさを守ろう
「海の豊かさを守ろう」は、海洋ゴミの増加や海の生態系の危機、海洋の酸性化など海の様々な問題解決がテーマの目標です。
海は地球表面積の4分の3を占めており、海洋と沿岸部の生態系を活用して生計を立てている人々は30億人を越えるといわれています。
そのため海の豊かさを守ることは、その人々を守ることにつながるのです。
さらに、海の豊かさとは、海そのものだけではなく、漁業など海と関わる人々の生活までを網羅しています。
目標15:陸の豊かさも守ろう
「陸の豊かさも守ろう」は、生態系や森林の保護、砂漠化への対処などがテーマの目標です。
私たち人間は主に陸で生活しているため、幅広い領域が対象になっています。
また、生態系を保護するための資金調達や遺伝資源がもたらす利益、密漁や違法取引なども言及されています。
目標16:平和と公正をすべての人に
「平和と公正をすべての人に」とは、持続可能な開発のために、すべての人が平和で取り残しのない社会を目指すことがテーマの目標です。
世界には戦争や紛争をしている地域がまだあり、命の危険に常に晒されていたり、住む場所を追われたりする人が少なくありません。
実際に国際連合人道問題調整事務所(OCHA)によると、紛争地域で暮らす子どもたちは約4億6800万人いるとされています。
これらを解決するために、非差別的な法整備や政策の推進などが求められています。
目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
「パートナーシップで目標を達成しよう」とは、グローバルパートナーシップの活性化がテーマの目標です。
グローバル化が進んだ現代では、国際問題を1つの国で解決するのが難しく、国と国が協力して課題解決に取り組む必要があります。
例えば、自国での解決が難しい途上国に対して、先進国が資金面や技術面で支援する体勢が求められています。
その他の目標を達成するためにも、目標17はより強く意識されているものです。
SDGsの達成状況
国際連合広報センターによると、2024年の持続可能な開発目標(SDGs)の報告では、うまく軌道に乗っている課題は全体の17%に留まっているとの結果がでています。
また、17の目標それぞれの達成状況は以下のとおりです。
特に目標2の「飢餓をゼロに」では、2022年に世界の60%近くの国で食料品が高騰したことで、大きく後退しています。
なお、目標8では、2023年に世界の失業率は5%という低水準を記録しました。
とはいえ、女性や若者の失業率は以前高く、非正規雇用が世界の労働力の58%を占めています。
このように安定的な雇用の実現にはまだまだ課題が残っているのです。
上記はほんの一例にすぎませんが、SDGsの課題のうち83%は今後に期待がかかっている状態です。
SDGsの目標達成に向けてできること
SDGsの目標達成に向けてできることを、個人と企業に分けて解説します。
普段から意識的に取り組めば、SDGs達成の一助になります。
個人でできること
SDGsの目標達成に向けて個人でできる活動の代表例は、以下のとおりです。
- 目標達成につながる行動を日常的に行う
- SDGsにつながる団体へ寄付する
行動意識を変えるだけで簡単に取り組めますので、それぞれ解説します。
目標達成につながる行動を日常的に行う
目標達成につながる行動を日常的に行うのは、SDGsを達成するために個人でできる活動です。
例えば、以下のような活動が一例として挙げられます。
- マイボトル・マイバックの持参
- 地産地消
- フェアトレード商品の購入
上記のように日常の行動を少しずつ変えていくことが大切です。
その他の行動について詳しく知りたければ、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
SDGsにつながる団体へ寄付する
SDGsの目標達成のために、環境保護や国際的な問題を解決する団体などに個人で寄付するのも方法の1つです。
SDGsにつながる活動を、お金という形で間接的に支援できます。
興味のある団体や団体の活動に賛同できるところに寄付するようにしましょう。
どの団体に寄付するべきか迷うようなら、以下の記事を参考にしてください。
企業ができることは資金や人材を使って課題解決すること
SDGsにおいて企業ができることは、資金や人材面で個人よりも大きな力を発揮して取り組む内容です。
一個人でなく、企業全体で取り組めば、大きな規模でSDGs達成に貢献できます。
そのためには、優先課題を見つける・自社が所属する分野で貢献できるところはないか探すことが大切です。
例えば、商品の生産流通過程の見直しや企業向けセミナーへの参加してSDGsへの理解を深めることが有効といえます。
さらに、CSR活動を通じてSDGsの目標達成を目指す方法もあります。
詳しくは以下の記事で解説しているので参考にしてください。
SDGsを知ってできることから取り組もう
SDGs(Sustainable Development Goals)とは、持続可能な開発目標という意味です。
2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す17の国際目標を掲げています。
1.貧困をなくそう 2.飢餓をゼロに 3.すべての人に健康と福祉を 4.質の高い教育をみんなに 5.ジェンダー平等を実現しよう 6.安全な水とトイレを世界中に 7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに 8.働きがいも経済成長も 9.産業と技術革新の基盤をつくろう 10.人や国の不平等をなくそう 11.住み続けられるまちづくりを 12.つくる責任つかう責任 13.気候変動に具体的な対策を 14.海の豊かさを守ろう 15.陸の豊かさも守ろう 16.平和と公正をすべての人に 17.パートナーシップで目標を達成しよう |
身近に取り組めることも多いため、日々の生活で少しずつSDGsにつながる行動を心がけてみてはいかがでしょうか。