SDGウォッシュとは?事例や解決策をわかりやすく解説

SDGウォッシュとは?事例や解決策をわかりやすく解説

SDGsに関係する言葉で、「SDGsウォッシュ」をご存知でしょうか。

一言で説明すると、SDGsに貢献していると見せかけて、実態は貢献していない状態のことを指します。

この記事では、SDGsウォッシュが企業に与えるリスクや原因を分かりやすく解説します。

さらに、記事の後半ではSDGsウォッシュの回避方法を5ステップで説明しますので、ぜひ参考にしてください。

SDGs(Sustainable Development Goals)とは
→ 世界的に意識されている持続可能な開発目標。17個の目標と、その下に169のターゲットと231の指標で構成されている。

なお、SDGs(Sustainable Development Goals)については、以下の記事で詳しく解説しています。

SDGsウォッシュとは

SDGsウォッシュとは、SDGsに貢献していると見せかけて、実は貢献していない状態のことを指します。

ウォッシュには一般的に「洗う」という意味がありますが、「覆う」という意味もあり、英語圏では汚いものを「覆って隠す」という意味で使われます。

SDGsウォッシュの例を挙げると、地球環境に配慮すると公言していながら具体的な行動になにも移していないなどです。

パフォーマンスとしてSDGsを言っているだけで、実態がない場合もあるのが現実です。

ちなみに、SDGsウォッシュ以外に似たような言葉として、グリーンウォッシュがあります。

その他にも〇〇ウオッシュとつく用語が複数あるので、混同しないように代表的なものを一覧表にまとめました。

用語意味
SDGsウォッシュSDGsに配慮していると見せかけて、実はSDGsに配慮していないこと
グリーンウォッシュ環境に配慮していると見せかけて、実は環境に配慮していないこと
ホワイトウォッシング白い塗料を塗って誤魔化すこと
ピンクウォッシングLGBTQなどの性的マイノリティに恩恵をもたらすと見せかけること
パープルウォッシング女性やフェミニズムに恩恵をもたらすと見せかけること

SDGsウォッシュの語源は、グリーンウォッシュといわれています。

グリーンウォッシュとは、環境に配慮していると見せかけて、実は環境に配慮していないという意味です。

つまり、「環境」を「SDGs」に変えたのがSDGsウォッシュとなっています。

SDGsウォッシュが企業に与えるリスク

SDGsウォッシュが企業に与えるリスクは、主に以下の3つです。

  • 企業イメージの低下
  • ステークホルダーの信頼を失う
  • 従業員のモチベーション低下

リスクの内容を知れば、SDGsウォッシュの回避につながるため順に解説します。

企業イメージの低下

SDGsウォッシュが企業に与えるリスクの1つに、企業イメージの低下があります。

例えば、SDGsに取り組んでいると発信していても、本当は何も活動していないケースです。

このため、顧客から実態が伴っていない表面的な企業と思われる可能性があります。

その結果、信頼を失って、企業イメージが低下してしまうでしょう。

企業イメージが低下すると、商品イメージにも悪影響が及び、不買運動がおこるかもしれません。

特に最近はSNSによる拡散効果が大きいので、一度ついた悪いイメージは瞬く間に広がってなかなか消えません。

ステークホルダーの信頼を失う

SDGsウォッシュが企業に与えるリスクには、ステークホルダーの信頼を失うことも挙げられます。

ステークホルダー 
→ 企業の利害関係に関わる全ての人(顧客や従業員、取引先や株主 など)

SDGsウォッシュにより企業が信頼を失うと、経営面に悪影響が出るのが予想されます。

特に現在はESG投資が注目されており、SDGsに取り組んでいるから投資をしている投資家も一定数います。

その中でSDGsウォッシュが発覚すれば、イメージダウンにつながって株価が下落したり、株主が増えにくくなったりする可能性があるのです。

従業員のモチベーション低下

SDGsウォッシュが企業に与えるリスクには、従業員のモチベーションの低下も考えられます。

ステークホルダーからの信頼の低下などから、経営陣や従業員は「自社の価値が下がったかもしれない」と思う場合があるでしょう。

その結果、自社の取り組みに誇りを持っている従業員にとっては、モチベーションが大きく低下する原因となり、最悪退職につながるかもしれません。

SDGsウォッシュが起因して、組織全体に悪影響が及ぶ可能性があります。

SDGsウォッシュは途上国の人々に悪影響を及ぼす場合がある

SDGsウォッシュは、巡り巡って途上国の人々にも悪影響を及ぼす場合があります。

例えば、目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」では、誰でも公平に利用できるよう「安さ」が1つのテーマです。

誰でも公平に安い価格で手に入れられてかつ、利益を求めた場合、サービス元の値段はそれよりも安い必要があります。

すると、サービスを提供する側の発展途上国の人々の賃金は、必然的に一層安価になるでしょう。

また、資源の産出国は、より安価に手に入れたい人たちによって、自国の持つ資源をめぐる戦争に巻き込まれる可能性もあります。

つまり、「安価に公平に行き渡らせる」という一方向だけを追い求めると、途上国の人々に悪影響を及ぼす場合があるのです。

このためSDGsの1テーマのみに取り組んで、他のテーマを無視するような動きは推奨されません。

SDGsウォッシュが起きる理由

SDGsウォッシュが起きる背景には、意図しない理由と意図的な理由があります。

1つ1つ読み解くと、理由にかかわらず対策が見えてくるはずなので、それぞれ解説します。

意図しないSDGsウォッシュ

意図しないSDGsウォッシュの代表例は、主に以下の2つです。

  • SDGsを企業に落とし込めていない
  • 取り組み内容が事実と矛盾している

思わぬところでSDGsウォッシュとならないようにそれぞれ解説します。

SDGsを企業に落とし込めていない

意図しないSDGsウォッシュの背景には、SDGsの内容と活動を企業に落とし込めていないため、取り組みが不十分になるケースが挙げられます。

例えば、会社ホームページにSDGsの17の目標ロゴだけ掲げているだけで、169のターゲットのうちどれにコミットするかまで記載されていないなどです。

また、記載しているものの、経営者や担当者が企業全体に浸透させる行動を行っておらず、形骸化してしまうケースもあります。

取り組み内容が事実と矛盾している

意図せず取り組み内容が実態の行動と矛盾しており、SDGsウォッシュが起きている場合もあります。

例えば、とあるメガバンクでは、脱炭素を目指す目標を掲げながら、火力発電所への融資に力を入れたケースがありました。

このように、表面上SDGs達成に向けて活動しているのに、実際は逆の活動をしていたという事例があります。

これらは経営者や担当者が気づかず行ってしまっている場合があるのです。

意図的なSDGsウォッシュ

意図的なSDGsウォッシュの代表例は、主に以下の3つです。

  • 事実以上に誇張した表現をしている
  • 明確なルールやガイドラインがない
  • 消費者の理解度が低い

企業が自由に目標設定・達成できるからこそ、意図的なSDGsウォッシュが生まれてしまいます。

消費者の立場でも、それに気づけるようにそれぞれ解説します。

事実以上に誇張した表現をしている

意図的なSDGsウォッシュの1つに、事実以上に誇張した表現をしている点が挙げられます。

誇張した表現をすると、消費者のイメージとかけ離れて不利益を被ってしまい、企業イメージの低下やクレームなどにつながるでしょう。

例えば、海外ではサステナブルをうたった紙製のボトルを販売した企業がありましたが、実際にはプラスチック製のボトルに紙を巻いただけという事例がありました。

この事例では、消費者から事実以上に誇張した表現をしていると思われると指摘されています。

明確なルールやガイドラインがない

意図的なSDGsウォッシュの中には、SDGsに関する明確なルールやガイドラインがないために発生するケースがあります。

特に日本で顕著で、それらを用意しないことで自社に都合のよいデータや数値を使って成果報告が可能になるからです。

例えば、温室効果ガスの排出をグラフ化した際に縦軸や横軸を任意の幅・上限にすることで実際に比べて大きく減少したと伝えたりなどです。

結果、企業は「SDGs達成に大きく貢献している」と見せかけられます。

消費者の理解度が低い

意図的なSDGsウォッシュが起こる背景には、SDGsに対する消費者の理解度の低さも挙げられます。

株式会社電通が行った調査では、SDGsを知っている人のうち、内容まで知っている人は4割しかいないという結果が出ています。

つまり、多くの消費者は、SDGsはなんとなく地球に良いという理解で、その中身までを深く知らない場合が多いのです。

上記のような背景もあり、企業にとって都合のいいような情報操作が容易にできてしまう現実があるといえます。

SDGsウォッシュを回避する5ステップの解決策

SDGsウォッシュを回避するための解決策を5ステップで解説します。

なお、SDGsを理解するためのツールとして、SDGsコンパスの活用が効果的です。

ここではその内容を簡単に説明します。

  1. SDGsを理解する
  2. 優先課題を見つける
  3. 目標設定
  4. 経営統合
  5. 報告と振り返り

上記の5ステップを意識すると、誰でもSDGsウォッシュを避けられるため順に解説します。

SDGsを理解する

SDGsウォッシュを回避するには、最初にSDGsとはなにかを理解することが大切です。

SDGsの理解があれば、意図しないSDGsウォッシュは回避できるでしょう。

SDGsについては以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。

優先課題を見つける

SDGsウォッシュを回避する2番目のステップは、優先課題を見つけることです。

SDGsについて理解したものの、自社が取り組む課題を見つけないと具体的な対策はできません。

企業の活動のなかで、SDGsのどの目標に寄与できるか検討しながら決めていきましょう。

難しければ、ステークホルダーともコミュニケーションをして、客観的な意見をもらうと優先課題を見つける手がかりになるかもしれません。

目標設定

SDGsウォッシュを回避する3番目のステップは、目標設定です。

実は、SDGsの達成期限は2030年と明確に決まっています。

このため、2030年までに達成可能な具体的な数値目標が必要です。

目標設定は、企業が業績などに基づいて設定するインサイド・アウト・アプローチと、世界や社会が求めるニーズにあわせたアウトサイド・イン・アプローチの2つの方法があります。

なお、SDGsコンパスでは、アウトサイド・イン・アプローチが推奨されています。

インサイド・アウト・アプローチでは企業の主観的な都合が入りやすいため、アウトサイド・イン・アプローチのほうが世界や社会にとって望まれる活動を定められるのです。

これらを意識しつつ、SDGsのコミットメントをウェブサイトなどで公開し、持続可能な社会へ貢献する姿勢を発信するとよいでしょう。

経営に落とし込む

SDGsウォッシュを回避する4番目のステップは、経営に具体的な行動を落とし込むことです。

先に設定した目標を基に、いよいよ行動に移していきます。

その際、具体的な年数と内容を反映させたり、競合他社や地域の学校・自治体など別の組織とパートナーシップを組んだりするとより効果的でしょう。

報告と振り返り

SDGsウォッシュを回避する5番目のステップは、報告と振り返りです。

例えば、企業のホームページで進捗状況を公開すると、透明性の確保につながります。

透明性を確保すると、ステークホルダーとのコミュニケーションも円滑になり、目標の軌道修正もしやすくなるでしょう。

上記のように、目標達成への進捗を定期的に公表し、報告・振り返りをスムーズに行うと、より良い成果や新たな課題・行動が見つかります。

SDGsについて企業は調査されることはない

現在の日本では、企業がSDGsの取り組み状況について特別に調査されることはありません。

なぜなら日本にはSDGsに関するガイドラインや法律が特にないからです。

ただし、景品表示法違反などSDGsウォッシュ以前に法律違反であるため、違反措置が取られる場合はあります。

よって、SDGsに積極的に取り組むかどうかは企業の自由意志となっています。

とはいえ、そのような状況だからこそ、積極的に取り組んでいる企業は多くの人からポジティブな評価を受けるでしょう。

SDGsウォッシュを見分ける方法

SDGsウォッシュを見分ける方法は、主に以下の2つです。

  • 曖昧な表現があれば問い合わせる
  • 自分で細かく調べる

日本では企業のSDGsの取り組み状況が調査されないことから、消費者の人たちは自身でSDGsウォッシュが起きているか判断しなければいけません。

曖昧な表現があれば問い合わせる

消費者の立場でSDGsウォッシュを見分ける方法に、曖昧な表現があればしっかりと問い合わせるというものがあります。

特にチェックするべきポイントは以下のとおりです。

  • 企業のSNSやウェブサイトを細かく見て事実と相違ないか
  • 値段が相場より安すぎる商品でないか

企業のSNSやホームページでは、SDGs対策をアピールしている場合があります。

この時に、根拠が不十分な表現があれば、疑いの目を向けて必要であれば問い合わせましょう

また、値段が安すぎる商品は、サプライチェーンや自社社員への配慮をしておらず、不当に安く販売している可能性があるので注意が必要です。

自分で細かく調べる

企業の発信内容などを自分で細かく調べるのは、地道ですがSDGsウォッシュを見分ける方法の1つです。

企業のホームページやインターネットの情報は、一般的に「良いこと」しか書かれていません。

そのため発信内容を以下のような視点で疑って考えてみてください。

  • その商品は本当に環境に良いのだろうか
  • なぜSDGsの課題解決に貢献しているといえるのか

上記の例のように、情報を鵜呑みにするのではなく、疑問を持ったら自分で調べて情報を精査する姿勢が大切です。

SDGsウォッシュ対策の海外事例

SDGsウォッシュの対策方法の海外事例を、以下の国ごとに紹介します。

  • アメリカ
  • ヨーロッパ
  • イギリス

日本とは異なり、SDGsに向けた法律やガイドラインが整備されているのです。

アメリカ

アメリカのSDGsウォッシュ対策には、環境面の定義であるグリーンウォッシュ対策があります。

米国連邦取引委員会が環境面のマーケティングについて規定する「Green Guides」によると、以下のようなカテゴリーに分けられて規定されています。

製品やパッケージの製造方法 製品またはパッケージの廃棄方法 「不使用」およびその他の一般的な主張
引用元:米国連邦取引委員会

米国では、環境に配慮していると表示しながら、実際は事実と異なる原料が使われていたという事例があったため、環境面に重きを置いた措置が取られていると考えられます。

ヨーロッパ

ヨーロッパのSDGsウォッシュ対策は、主に2つあります。

  • EU消費者法で「環境にやさしい」「エコ」「グリーン」といった根拠のない表現は禁止している
  • 商品PRの際は科学的根拠と第三者機関による検証をもって、消費者に明確な表現をするよう義務付けている

上記のように決められた背景には、2020年に欧州委員会がSDGsウォッシュの環境版である、グリーンウォッシュに関する調査を実施したことに由来します。

調査の結果、57.5%が提示されたメッセージの正確性を判断するのに根拠が不十分とされたためです。

ヨーロッパは法律で厳重に規定されているため、SDGsに対する意識が非常に高いといえます。

イギリス

イギリスでは、SDGsウォッシュを起こさないためのガイドラインとして「グリーン・クレーム・コード」を制定しています。

グリーン・クレーム・コードでは、以下の6つの原則が定められています。

真実かつ正確であること明瞭であること重要な情報を省略・隠蔽しないこと公平で意味のある比較のみをおこなうこと製品のライフサイクル全体を考慮すること信頼性のある証拠で裏付けられていること
引用元:GOV.UK 

上記を基に、環境への配慮に重きをおいた活動が盛んです。

SDGsウォッシュと思われない真摯な対応をしよう

企業は、SDGsウォッシュと思われない真摯な対応をすることが大切です。

SDGsウォッシュと思われてしまうと、以下のようなリスクがあります。

  • 企業イメージの低下
  • ステークホルダーの信頼を失う
  • 従業員のモチベーション低下

SDGsウォッシュを回避するために、本記事で紹介したSDGsコンパスを基に、SDGs達成に向けてできることを始めていくとよいでしょう。


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