ボランティアと聞くと、一般的に無償のイメージをされる方が多いのではないでしょうか。
しかし、実費や謝礼を受け取れる有償ボランティアも存在します。
有償ボランティアなら、多少の稼ぎを得つつ社会貢献活動に取り組むことが可能です。
また、自身が保有している専門性や技術力を活かしやすいメリットもあります。
そこで本記事では、有償ボランティアの特徴や参加するメリット、デメリットなどを解説します。
有償ボランティアへの参加を検討している方に役立つ内容となっているので、ぜひ最後までご覧ください。
有償ボランティアとは
有償ボランティアは、多少のお金をいただきながらボランティア活動に参加することです。
「社会貢献活動をする」という点は無償ボランティアと共通していますが、以下のような有償ボランティアならではの特徴があります。
- ボランティア活動の参加に対する実費や謝礼を受け取れる
- 無償ボランティアとは仕事内容が異なることがある
- 雇用契約を結ばないないため労働基準法は適用されない
有償ボランティアを詳しく知るために、それぞれ解説します。
ボランティア活動に関する実費や謝礼を受け取れる
有償ボランティアにおける最大の特徴は、ボランティア活動への参加に対して実費や謝礼を受け取れる点です。
厚生労働省の資料によると、「実費や交通費、さらにはそれ以上の金銭を得る活動」を「有償ボランティア」と呼ぶ例があるとしています。
なお、有償ボランティアで受け取れる金額は、団体によって異なります。
労働政策研究・研修機構の資料によると、2005年における1時間あたりの平均謝礼金額は828円です。
引用:労働政策研究・研修機構「第3章 有償ボランティアの実際」
最少額は200円、最大で3,500円となっています。
なお、NPO法人の中でも、有給職員がいない団体は謝礼金額が高い傾向にあります。
また、活動分野でみると、「保健・医療・福祉」に該当するNPO 法人は他の活動分野のNPOより謝礼金額が低いです。
無償ボランティアとは仕事内容が異なることがある
有償ボランティアは、無償ボランティアとは仕事内容が異なるケースがあります。
労働政策研究・研修機構のデータによると、無償ボランティアと有償ボランティアの仕事内容に関して「一部同じ」と回答した人が30.3%、「全く異なる」と回答した人が28.2%いました。
引用:労働政策研究・研修機構「第3章 有償ボランティアの実際」
ほかにも、無償ボランティアよりも有償ボランティアのほうが、高い技能・責任感を持っていることが別の調査からわかります。
下記は、仕事内容が「全く同じ」「ほぼ同じ」「一部同じ」と回答したNPO法人のうち、「技術・技能レベル」「仕事への責任感」「定着性」「活用のしやすさ」の違いについて回答した調査結果です。
3が中央値で、点数が大きくなるほど有償ボランティアが上回り、点数が小さくなるほど無償ボランティアが上回っています。
引用:労働政策研究・研修機構「第3章 有償ボランティアの実際」
「有償ボランティア」はすべて中央値である3を上回っているため、多くの有償ボランティアは高い技能や責任感を持っていることがわかります。
つまり、参加するボランティアによっては、有償ボランティアには専門性が高い別の仕事を任せるケースがあるでしょう。
雇用契約を結ばないないため労働基準法は適用されない
ボランティアは、勤務先で業務内容について指揮・命令を受ける労働者ではないため、労働基準法が適用されません。
労働基準法において、労働者は「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」が該当します。
しかし、ボランティアは自発的な意思で参加しているとされており、労働の対価として賃金を得ているわけではありません。
よって、労働基準法が適用されないため、雇用関係に基づく解雇という概念がなく、最低賃金に関する規定も適用されないのです。
つまり、主催者はボランティア参加希望者の参加を認めなかった場合でも、解雇予告手当を支払う必要はありません。
また、支払う謝礼が地域の最低賃金を下回っているケースもあります。
これらのようなボランティアの扱いについては、海外で行う有償ボランティアも同様です。
JICAによると、海外ボランティアで支給される日当は、あくまでも生活するための実費であって「給料」や「報酬」ではありません。
よって、有償ボランティアでは、支給される金銭が日本や海外の現地の最低賃金を下回る可能性があります。
有償ボランティアとアルバイトの違い
有償ボランティアとアルバイトの大きな違いは、「労働者に該当するかどうか」です。
労働者であるアルバイトの場合、就労条件に応じて雇用保険や健康保険などに加入します。
一方、労働者ではない有償ボランティアは、労働保険や社会保険に加入しません。
つまり、ボランティア中にケガをしても労災補償は受けられず、健康保険から傷病手当金を受け取ることもできないのです。
ただし、社会福祉法人全国社会福祉協議会が運営している「ボランティア活動保険加入」に加入すると、ボランティア中のケガや損害賠償責任に備えられます。
なお、有償ボランティアとアルバイトを区別するにあたって、受け取る謝礼の金額は関係ありません。
有償ボランティアで多額の謝礼を受け取ったとしても、労働者には該当しないです。
有償ボランティアに参加するメリット
有償ボランティアに参加するメリットには、以下のようなものがあります。
- 金銭的な負担を抑えて社会貢献ができる
- 自身が保有している高い専門性や技術力を活かせる
- 人材価値の向上につながる
それぞれ詳しく解説します。
金銭的な負担を抑えて社会貢献ができる
有償ボランティアは、金銭的な負担を抑えて社会貢献ができます。
無償ボランティアの場合、交通費をはじめとした参加費用がすべて自己負担となるため実質的に金銭負担があります。
しかし、有償ボランティアなら、その負担を軽減することが可能です。
例えば、交通費や作業で必要な道具代などの実費が支給されるなどが挙げられます。
金銭的な負担を抑えつつボランティア活動に参加したい人にとっては、有償ボランティアは良い選択肢です。
自身が保有している高い専門性や技術力を活かせる
有償ボランティアでは、自身が保有している高い専門性や技術力を活かせる可能性があります。
場合によっては、有償ボランティアと無償ボランティアで任せる仕事を分けているケースがあるためです。
高い専門性や技術力を活かせれば、より活動に貢献できる度合いが大きくなり、モチベーションを高く保てるでしょう。
人材価値の上昇につながる
有償ボランティアへの参加を通じて、自身の人材価値の向上が期待できます。
労働政策研究・研修機構のデータの資料によると、有償ボランティアの中には、高い意識を持って参加している人が多いという特徴があります。
よって、有償ボランティアを通じて、高い意識を持って社会貢献活動を行っている人たちと出会うことができ、良質な人脈を広げられる可能性があるのです。
有償ボランティアの参加者のなかには、本業では出会えないような貴重な経験を有している方がいるかもしれません。
そのような人たちと繋がりを得ることで、今より知見を広げられる可能性があります。
有償ボランティアに参加するデメリット
有償ボランティアには多くのメリットがありますが、以下のようなデメリットがあります。
- 無償ボランティアよりも責任が大きくなりやすい
- 受け取れる謝礼は最低賃金を下回ることがある
- 正社員やアルバイトと同じ仕事を行わせる悪質な主催者がいる
参加するボランティアによっては、有償ボランティアは無償ボランティアよりも責任が大きくなる可能性があります。
高い専門性が求められる作業を行う場合、やりがいを感じられる一方で「無償ボランティアの人よりも貢献しなければ」というプレッシャーを感じることもあるでしょう。
さらに、有償といえども、受け取れる謝礼は低額なケースもあります。
例えば、「月合計8時間稼働・月間謝礼3,000円」の有償ボランティアの場合、時給換算すると375円です。
金銭的なモチベーションを感じられないうえ、場合によっては謝礼よりも自身が負担した経費のほうが高くなる可能性があります。
また、有償ボランティアを利用して、社員やアルバイトとほとんど同じ業務を低い報酬で行わせるような団体が存在するかもしれないので注意してください。
有償ボランティアは労働保険と社会保険への加入しないため、最低賃金が適用されません。
悪質な有償ボランティアへの参加を避けるためには、主催者のホームページや実際に参加した人の口コミなどをしっかり確認しましょう。
主催者がボランティア参加者へ金銭を支払うメリット
有償ボランティアが行われているのは、主催者にもメリットがあるからです。
謝礼を用意することで、ボランティア参加者数と継続して参加してくれる人数の増加が期待できます。
ボランティアには興味があるものの、「自分のお金を実質的に負担して参加するのは難しい」と感じている人の参加を促せる可能性が高まるためです。
また、無償ボランティアだと、主催者が「参加者にタダでやってもらうのは申し訳ない」と心理的負担を感じている可能性があります。
そこで多少なりとも謝礼を払うことで、心理的な負担を軽減できる点も主催者側のメリットです。
有償ボランティアに参加した場合の税金や確定申告
有償ボランティアに参加した場合、税金関係の手続きが必要となるケースがあります。
例えば、時給制の有償ボランティアに参加した場合、報酬が給与として取り扱われる可能性が高いため、基本的に源泉徴収が行われます。
ただし、請負(委託)と判断された場合、源泉徴収は行われません。
また、給与所得を得ており、副業で参加していた有償ボランティアの謝礼が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
(確定申告が必要な方)
給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える 出典:国税庁 確定申告が必要な方 |
年間で受け取った謝礼が20万円以下の場合は、確定申告をする必要はありません。
NPO法人での副業について詳しく知りたい場合は、以下の記事で解説しているのでぜひ参考にしてください。
有償ボランティアの探し方
有償ボランティアを探す際には、以下のサイトを利用すると便利です。
ボランティアの活動テーマやカテゴリごとに検索できるため、自身の経験や強みを活かせるボランティアを見つけられます。
また、国内だけでなく、海外ボランティアも探すことが可能です。
上記サイトのほかに、ボランティアを募集している自治体のホームページで検索できることもあります。
支援したい自治体が決まっている場合は、「〇〇県 ボランティア」「〇〇市 ボランティア」などで検索してみてください。
有償ボランティアを通じて稼ぎながら社会貢献をしよう
有償ボランティアへ参加すれば、金銭的な負担を抑えながら社会貢献活動を行えます。
主催者が信頼できる団体であれば、謝礼を受け取れるボランティアでも安心して参加できます。