認定NPO法人とは?NPO法人との違いや設立メリットを分かりやすく解説

認定NPO法人とは?NPO法人との違いや設立メリットを分かりやすく解説

認定NPO法人の設立を考えているけれども、具体的にどのようなメリット・注意点があるのか疑問に思っていないでしょうか。通常のNPO法人となにが違うのか分からないと、本当に認定NPO法人を設立すべきか迷ってしまいます。

認定NPO法人は寄付者・設立者のどちらにも税制優遇があってメリットの多い制度です。

ただし、認定までの手続きがあったり、設立後に事務処理が増えたりなどの注意点もあります。

本記事では、認定NPO法人とはどのような団体なのか説明しつつ、具体的な税制メリットを解説します。また、認定NPO法人の設立までの流れや必要書類などもお伝えするので、ぜひ最後まで参考にしてください。

認定NPO法人について理解して、設立のイメージをつかみましょう。

認定NPO法人とはNPO法人への支援を拡大させるために作られた制度

認定NPO法人とは、NPO法人への寄付を促進する目的で、認定されたNPO法人への寄付に対して税制優遇を受けられるようにした制度です。

寄付者に節税につながると知られれば、認定NPO法人への寄付者数・寄付額が多くなることが期待できます。また、認定NPO法人として認定されると、NPO法人自体にも税制優遇があるのです。

元々、国税庁が認定を行っていましたが、現在は各都道府県や政令指定都市にある担当部・課で認定を受けられます。

寄付金が受けやすくなるとはいえ、実は認定NPO法人の収入源は寄付金以外のほうが多いのです。

NPO法人の収入源については、以下の記事で解説しているので気になる方は参考にしてください。

認定NPO法人と特例認定NPO法人との違い

認定NPO法人とは別に、特例認定NPO法人という制度があります。

特例認定NPO法人とは、寄付メリットのあるNPO法人を増やす目的で、認定基準を少し緩くしたものです。ただし、寄付者やNPO法人側が受けられる税制メリットが少なかったり、更新ができなかったりと注意点があります。

認定NPO法人と特例認定NPO法人でどのような違いがあるかまとめると、下記の表のとおりです。

名称認定NPO法人特例認定NPO法人
申請条件設立から1年を超える期間が経過しているNPO法人設立から1年を超える期間が経過しているかつ5年以内のNPO法人
認定基準8つの基準をすべて満たすパブリック・サポート・テスト(PST)を除く7つの基準を満たす
実績判定期間申請の直前に終了した事業年度終了の日以前の5年間
※初回申請の場合は2年間
申請の直前に終了した事業年度終了の日以前2年
税制優遇1.個人が寄付した場合、寄付金控除が受けられる
2.法人が寄付した場合、損金算入枠を拡大できる
3.相続財産を寄付した場合、相続税の課税対象から除かれる
4.認定NPO法人の収益事業に属する資産から、収益事業以外の公益事業に対して支出された金額をみなし寄付金として損金算入できる
左記の1・2のみ。3・4は適用なし。
有効期間5年間3年間
更新手続有効期間の満了日の6ヶ月前から3ヶ月前までの間に必要更新できない

(参照:内閣府

大きな違いは、認定基準の差と更新手続きの有無です。

認定NPO法人は8つの認定基準を満たす必要がありますが、特例認定NPO法人は1つ少なく設定されています。また、認定NPO法人は更新手続きができる一方、特例認定NPO法人は更新手続きができません。

つまり、特例認定NPO法人は設立までの基準が少ないですが、更新できない一時的な認定NPO法人です。

継続的に寄付をもらいやすい状態にしておくには、認定NPO法人として申請したほうが有利といえます。

認定NPO法人を設立すると2つの税制メリットがある!寄付者も節税できる

認定NPO法人を設立すると得られる具体的な税制優遇は、下記の2つです。

  • 個人・法人のどちらの寄付者も税制優遇を受けられる
  • みなし寄付金制度で法人税を安くできる

認定NPO法人にはどのような設立メリットがあるのか知るために、それぞれ説明します。

個人・法人のどちらの寄付者も税制優遇を受けられる!寄付額の増加が見込める

認定NPO法人になると、個人・法人のどちらの寄付者にとっても税制メリットがあるNPO法人になれます。

個人・法人が認定NPO法人に寄付すると、どのように節税になるのかというと、下記のとおりです。

(個人が認定NPO法人に寄付した場合の税制優遇)

  • 所得控除か税額控除を選んで、所得税を安くできる
  • 指定の寄付先では住民税の控除も受けられる
  • 相続財産を寄付した場合、寄付金額分が相続税の課税対象にならない

(法人が認定NPO法人に寄付した場合の税制優遇)

  • 損金算入できて、法人税を安くできる
  • 通常の損金算入枠とは別枠なので、損金算入限度額を増やせる

個人なら所得控除か税額控除、法人なら損金算入による税制優遇を受けられて、節税につながります。寄付者側から考えると、せっかく寄付するなら税制優遇があるNPO法人にしたいと思うでしょう。

そのため寄付すると節税になる認定NPO法人へ積極的に寄付しようと考えるため、寄付額の増加が期待できます。

みなし寄付金制度で法人税を安くできる

認定NPO法人自身も、みなし寄付金制度を活用して節税できます。

みなし寄付金制度とは、収益事業の資産から収益事業以外の公益事業のために支出されたお金が、寄付金として扱われるというものです。その寄付金はみなし寄付金と呼ばれ、決算時に損金算入ができるため、節税につながります。

損金算入限度額は、所得金額の50%または200万円のいずれか多い金額までです。また、特例認定NPO法人はみなし寄付金制度を利用できないので、注意してください。

認定NPO法人になるための認定基準・欠格事由

認定NPO法人の審査には、8つの認定基準と6つの欠格事由があります。認定基準は当然満たさなければいけません。

ただし、認定基準を満たしていても、1つでも欠格事由に当てはまってしまうと、認定NPO法人になれないので注意してください。

基準がよく分からないまま手続きを進めないように、認定基準と欠格事由の詳細をお伝えします。

8つの認定基準

認定NPO法人になるために必要な8つの認定基準は、下記のとおりです。

1.パブリック・サポート・テスト(PST)に適合すること(特例認定NPO法人は除きます。)
2.事業活動において、共益的な活動の占める割合が、50%未満であること
3.運営組織及び経理が適切であること
4.事業活動の内容が適正であること
5.情報公開を適切に行っていること
6.事業報告書等を所轄庁に提出していること
7.法令違反、不正の行為、公益に反する事実等がないこと
8.設立の日から1年を超える期間が経過していること

引用:内閣府 「認定制度について

上記の基準を満たしているかどうか、提出書類や実態調査から所轄庁が判断します。

パブリック・サポート・テスト(PST)に関しては、後述します。

パブリック・サポート・テスト(PST)は市民から支援を受けているか判断する基準

認定NPO法人の認定基準の1つであるパブリック・サポート・テスト(PST)とは、NPO法人が現時点で広く市民から認められて支援を受けているか判断するためのものです。

NPO法人として実績がなければ、認定NPO法人として認められません。パブリック・サポート・テスト(PST)の判定基準は、下記の3つのうちいずれかを選択します。

基準内容
相対値基準実績判定期間における経常収入のうち、寄付金の占める割合が5分の1以上であること。
絶対値基準実績判定期間内の各事業年度中の寄付金の総額が3,000円以上である寄付者の数が、年平均100人以上であること。
条例個別指定認定NPO法人としての認定申請書の提出前日までに、事務所のある都道府県または市区町村の条例により、 個人住民税の寄付金税額控除の対象となる法人として個別に指定を受けていること。
※認定申請書の提出前日までに条例の効力が生じている必要がある

参照:内閣府

上記のうち満たせる見込みのある基準を選んで、認定NPO法人の手続きを進めましょう。

6つの欠格事由

認定NPO法人の審査における6つの欠格事由は、下記のとおりです。

1.役員のうちに、次のいずれかに該当する者がある法人
 1.認定又は特例認定を取り消された法人において、その取消しの原因となった事実があった日以前1年以内に当該法人のその業務を行う理事であった者でその取消しの日から5年を経過しない者
 2.禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
 3.特定非営利活動促進法(NPO法)、暴力団員不当行為防止法に違反したことにより、もしくは刑法204条等若しくは暴力行為等処罰法の罪を犯したことにより、又は国税若しくは地方税に関する法律に違反したことにより、罰金刑に処せられ、その執行を終わった日又はその執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
 4.暴力団又はその構成員等

2.認定又は特例認定を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない法人
3.定款又は事業計画書の内容が法令等に違反している法人
4.国税又は地方税の滞納処分の執行がされている又は滞納処分の終了の日から3年を経過しない法人
5.国税又は地方税に係る重加算税等を課せられた日から3年を経過しない法人
6.暴力団、又は、暴力団若しくは暴力団構成員等の統制下にある法人

引用:内閣府 「認定制度について

基本的には犯罪や暴力団関係者とのつながりや法令違反などが該当しています。

誠実な運営を心がけていれば、欠格事由に抵触することはないでしょう。

認定NPO法人の設立までの流れや必要書類

実際に通常のNPO法人が認定NPO法人を設立する場合、主に下記のような流れで進みます。

  1. 所轄庁に事前相談
  2. 認定申請
  3. 実態確認
  4. 認定・不認定の決定

また、NPO法人の活動に対する実績判定期間が設けられています。具体的には、今まで認定を受けていないNPO法人は過去2年、過去に認定を受けたことがあるNPO法人は過去5年の事業期間です。

その期間内に認定基準を満たしているか、および欠格事由に該当していないかチェックしましょう。

ここからは必要書類や認定後にやるべきことについて、それぞれ説明します。

必要書類

認定NPO法人として申請するためには、『認定または特例認定を受けるための申請書』に加えて、下記の添付書類が必要です。

  • 寄付者名簿(実績判定期間内の日を含む各事業年度分)
  • 認定基準を満たす旨および欠格事由に該当しない旨を説明する書類 
  • を充当する予定の具体的な事業の内容を記載した書類

『認定または特例認定を受けるための申請書』と上記の添付書類は、各都道府県や政令指定都市の公式サイトもしくは窓口でフォーマットが用意されています。

例えば、横浜市の公式サイトでは、認定申請に必要な書類をまとめてダウンロード可能です。ご自身のNPO法人が属する所轄庁の公式サイトや窓口から、必要書類を用意しましょう。

認定されたら各種情報が公示される

もし認定NPO法人として認められたら、所轄庁から下記の情報が公示されます。

認定NPO法人等の名称
代表者氏名
主たる事務所およびその他の事務所の所在地
当該認定の有効期間
その他所轄庁の条例で定める事項

引用:内閣府 「認定制度について

念のため情報が間違っていないか確認しておくとよいでしょう。

認定NPO法人の運営に関する3つの注意点

認定NPO法人を設立したら、運営に関して下記の3点に注意しましょう。

  • 認定の有効期間がある
  • 寄付金の管理や活動報告などの事務処理が増える
  • 情報公開をより徹底する必要がある

認定NPO法人を安定的に運営していくために知っておくべきなので、それぞれ説明します。

認定の有効期間がある

認定NPO法人には5年、特例認定NPO法人には3年という有効期間があります。認定NPO法人は更新できますが、特例認定NPO法人は更新できないので注意してください。

また、認定NPO法人の更新手続きは、有効期間の満了日の6ヶ月前から3ヶ月前までの間に更新申請書を提出しなければいけません。

有効期間の満了日が近づいてきたら、忘れずに対応しましょう。

寄付金の管理や活動報告などの事務処理が増える

認定NPO法人になると事務処理が今までより増えるので、運営に手間がかかります。

例えば、毎事業年度に1度、下記に関して報告義務が発生するのです。

  • 事業年度終了後の役員報酬規程など
  • 助成金の報告

また、有効期間の更新通知がきた時や役員の変更があった場合なども書類の提出をしなければいけません。事務処理を適切に行えるように、体制を整えておきましょう。

情報公開をより徹底する必要がある

認定NPO法人になると、今まで以上に情報公開を徹底する必要があります。具体的には下記のような情報を公開して、いつでも閲覧できるようにしておかなければいけません。

① 事業報告書等 
② 役員名簿
 ③ 定款等 
④ 認定等の申請書に添付した認定等の基準に適合する旨を説明する書類及び欠格 事由に該当しない旨を説明する書類 
⑤ 認定等の申請書に添付した寄附金を充当する予定の具体的な事業の内容を記載 した書類
⑥ 前事業年度の役員報酬又は職員給与の支給に関する規程
 ⑦ 前事業年度の収益の明細など 
⑧ ⑦のほか、法規 32②で定める書類
 ⑨ 助成金の支給の実績を記載した書類

引用:内閣府 「5 認定NPO 法人制度の概要

閲覧の請求があった時にすぐに開示できるように、忘れずに書類を用意しておきましょう。

認定NPO法人になると寄付額の増加につながる

認定NPO法人を設立すると、個人・法人のどちらの寄付者にとっても節税につながる団体になれます。そのため寄付者の動機づけになり、寄付額の増加が期待できるのです。

また、認定NPO法人自身もみなし寄付金制度を活用できるようになるため、税制優遇を受けられます。

認定NPO法人になれれば、節税に加えて寄付額の増加も見込まれるのでメリットが多いです。NPO法人としての活動を拡大していくなら、認定NPO法人になることを検討してもよいでしょう。

ただし、認定までの手続きがあったり、認定後に事務処理が増えたりする点はあらかじめ把握しておいてください。

認定NPO法人を設立して、税制優遇を受けつつ社会貢献していきましょう。


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