ミッションプロジェクトの寄付金の使途を教えてください。
縦割りの弊害から、児童福祉に十分なサポート費用は予算化されていません。寄付金は学習支援事業とユースセンター事業で大切に活用させていただきます。
3keys(スリーキーズ)では行政や既存の仕組みでは補えない部分をサポートしていますが、施設に保護された子どもたちへの学習支援では子どもたちはもちろん、職員の方々にとってもより使い勝手のよい支援システムを継続的に提供していくことが必要です。これまで開発してきた教材や研修プログラムをWeb上で提供するためのシステム化や動画コンテンツ化などに取り組んでいきます。
3keysのユースセンターは子どもたちがリラックスして過ごせることを最優先とする「非交流型」が特徴となっています。「非交流型」の施設はとてもユニークで、これまでに、厚生労働省、東京都をはじめ様々な行政区の方が内覧に来られました。子どもたちのニーズも高く、利用者数は継続的に増えてきています。さらに子どもたち目線のサービスや運営方法を模索し、ノウハウを蓄積し、こうしたユースセンターのモデルとなることを目指していきます。
団体の具体的な取り組みについて教えてください。
3keysでは大きく、子どもたちに向けた「子ども事業」と、大人や社会に向けた「伝える・変える事業」に取り組んでいます。「子ども事業」はさらに「セーフティネット作り」と「コンテンツ作り」に分かれています。
【子ども事業:セーフティネット作り】
オンラインとオフラインの両面から子どもたちをサポートしています。
● Mex(ミークス)
悩みを抱えた子どもたちが悩みに合った支援サービスを自分で探してつながることができるサイトで、悩み解決に役立つ様々なコラムや啓発動画も数多く掲載しています。2022年度は約186万人の子どもたちが利用しました。
● ユースセンター
2021年に新宿区に開設しました。家や学校が安心できる居場所ではない子どもたちは少なくありません。新型コロナウイルス感染影響の長期化で逃げ場所はさらに減り、子どもたちが家や学校や地域のしがらみから逃れ自分らしくいられる場所はほとんどありません。一人でリラックスして過ごせる場所として週6日オープン、食事やシャワーも利用できます。
【子ども事業:コンテンツ作り】
子どもたち向けに様々なコンテンツを提供しています。
● 学習支援
児童養護施設などでの学習支援では適切な教材とそれを施設内で習慣化していくための定期的な訪問・アドバイスが欠かせません。子どもたちや施設の職員の方にとってより使い勝手の良い学習支援とするべく、これまで開発してきた教材や研修・プログラムをWeb上で共有するためのシステム化や動画コンテンツ化に取り組んでいきます。
● 10代向けコラム・啓発動画
子どもたちが抱える悩みの解消・軽減に役立つ知識・情報を分かりやすく伝える読み物を「Mex(ミークス)」に掲載しています。また、子どもたちに虐待やいじめ、DVなどの正しい知識をつけてもらい、誰かに助けを求めてよいことをつたえるために、啓発動画「ミーのなやみ」を制作・公開、抱えた悩みに合わせて相談先なども紹介しています。
【伝える・変える事業】
大人向けに子どもたちを取り巻く課題について発信、共有しています。
● 白書 – 日本の子どもたちの今
3keysのホームページ内に「白書 – 日本の子どもたちの今」のページを設け、データなどをもとに、複雑化している子どもたちの現状や課題を伝えています。大人たちが「日本の子どもたちの今」を知り何ができるかを考えるきっかけにしたいと思っています。
白書 ‐ 日本の子どもたちの今
● Child Issue Seminar
私たち大人が子どもたちを取り巻く現状を知り、責任を果たしていくことを促すためにこれまでに23回のセミナーを全国で開催しています。今後もタイムリーなテーマを取り上げ、オンラインによる開催も含め積極的に実施していきたいと考えています。
どのような方が働いているのか教えてください。
契約形態はいろいろですが、3keysでは様々な経験や経歴を持った職員が事業活動やプロジェクトに取り組んでいます。
ユースセンターでは子どもたちに関係する仕事の経験を持つ人、食事の提供では調理師免許を持つ人が日々の運営に関わっています。また、オンラインによる支援事業も行っているため、SNSの発信やWebの運営に活かせる経験を持った人も在籍しています。他にも現在子育て中の人、中高生のお子さんがいる人、定年後に経験を活かして入職した人、大学新卒の人などが3keysのビジョンを共有し、子どもたち目線を大切にしながら活動に取り組んでいます。
団体設立の背景や目的を教えてください。
3keysの設立は、代表理事の森山が大学在学中にはじめたボランティア活動がきっかけです。教育や福祉に興味を持って調べて出会ったのが児童養護施設の情報でした。
そして、虐待などの家庭の事情で家に暮らせず親元を離れて暮らす子どもたちが全国に5万人もいることを知りました。自宅から15分ほどのところに児童養護施設があることにも気づきませんでした。その施設が学習ボランティアを募集しているのを知り、塾講師としてのアルバイト経験が役立つのではと考えたのですが、想像以上の学習の遅れや、自己否定感に苛まれている子どもたちがたくさんいる中では、自分が週に1~2回教える程度では全く足りないと感じました。
施設職員の方たちも子どもたちの日常生活の対応で忙しく、ボランティアを受け入れる体制を整える余裕もありませんでした。そこで大学生の有志メンバーを集めて2009年に学生サークル3keysを設立し、2023年で14年目を迎えました。この間、2013年に「Child Issue Seminar」による啓発活動を開始、2016年には10代向け支援サービス検索・相談サイト「Mex(ミークス)」を開設、2019年には子ども向け啓発アニメーション「ミーのなやみ」を制作・配信、2021年には「ユースセンター」を開設と、一人でも多くの悩みを抱えた子どもたちを支援し、その現状を伝える活動をしてきました。
スマートフォンやSNSの普及、コロナ感染の影響など、子どもたちを取り巻く環境はどんどん変化してきています。今後も子どもたちに今必要な支援は何かを常に考えて事業やプロジェクトに取り組んでいきます。
ミッションプロジェクト参加者へメッセージをお願いいたします。
はじめに皆さまからのご支援に対しまして改めて感謝申し上げます。すでにご承知のとおり、子どもたちを取り巻く状況は継続して悪化しています。子どもの貧困、虐待相談件数や若年層の自殺者数は過去最高水準で推移していますし、性被害、不登校、いじめも増加傾向が続いています。2020年からはさらに新型コロナウイルス感染拡大がはじまり、子どもたちの生活にも大きな影響を与えてきました。
子どもたちは次の社会を支える担い手です。子どもたちは社会からたくさんの愛情を受けてこそ、社会に還元しようと思うものです。親にも恵まれず、他に誰も助けてくれなければ、社会を憎み、それが深刻になって犯罪に走ったり、絶望から自分の命を絶ったりすることも恐れなくなり、結局は私たち、そして社会にそのツケが回ってきます。虐待や貧困は連鎖しています。
虐待をする親も子どもの頃に虐待を受けていた人が少なくありません。私たちは、すべての子どもたちがたくさんの人に支えられ、大事にされて育ってほしいと強く願っています。子どもたちにより良い支援を届けていくためには、皆さまのご理解とご支援が欠かせません。これからもよろしくお願いいたします。